トランプ大統領の新関税で日本の中古車輸出はどうなる?JDM車への影響を解説

トランプ大統領が示唆する「25%関税」って何?

JDM車とはJapanese Domestic Market車の略で、直訳すると日本の市場に合わせて作られた車の事です。

実は3月には『トランプ大統領の政策が与えそうな中古車市場への影響』というブログを書いたのですが、状況がここへ来てだいぶ変わってきたので、緊急でこのブログを書かせていただきました。

まず背景から見てみましょう。トランプ米大統領は、日本を含む海外から輸入車に対し、新たに25%の高関税を課す政策を示唆しています​。2025年3月には「日本からの自動車や部品に追加で25%の関税をかける」と発表し、日本政府も「極めて遺憾」と強い懸念を表明しました。一応先日の大統領の発言でその実行は90日間は棚上げになったので、取り敢えずは時間を稼げた感じでホッとした人も多いのではないでしょうか?

この関税引き上げの狙いはアメリカ国内の産業保護とされていますが、日米間の自動車貿易に大きな波紋を広げています。実際、アメリカ向けの日本製自動車(完成車)と部品は日本の対米輸出全体の中で大きな割合を占めており、この動きは日本車メーカーだけでなく両国の経済にも無視できない影響を及ぼすとみられています。では特に、日本からアメリカへの中古車輸出、なかでも日本国内モデル(いわゆるJDM車)にはどんな影響が考えられるのでしょうか?本記事ではそのポイントを分かりやすくまとめてみます。

日本からアメリカへの中古車輸出の現状:25年ルールとJDMブーム

アメリカでは基本的に「25年ルール」という輸入規制があります。製造から25年以上経過した車でなければ、安全基準などの理由で原則輸入できない決まりです。つまり、日本の比較的新しい中古車(例えば数年落ち程度の車)は現地の法律上そもそもアメリカに持ち込めず、輸出されていません。このルールは政権が変わってもそう簡単には変わらないため、以前から日本の中古車輸出業界ではアメリカ向けは限定的でした。

一方で、この25年ルールのおかげで**「JDM旧車」ブームが北米で盛り上がっています。25年以上前に日本国内向けに生産されたスポーツカーや希少車が、続々とアメリカに合法輸入できるようになっているからです。例えば日産スカイラインGT-R(R32型は1989年~)、トヨタスープラ、ホンダNSXなど、日本市場向けの往年の名車たちは、25年経過した今、米国のクルマ好きにとって憧れの的です。また意外なところでは軽トラック(軽トラ)や軽バンといった日本の商用車も「安くて丈夫」と人気で、右ハンドルのまま趣味や実用で輸入されるケースがあります​。ハワイやグアム、サモアといった米国圏内の地域では右ハンドル車に抵抗が少なく、日本の中古車が昔から広く利用されています。こうした地域やエンスージアスト(愛好家)向けマーケットが、日本からアメリカへの中古車輸出の中心と言えます。全体として見れば、これらJDM車**の輸出台数は新車輸出などに比べればごく小さいニッチ市場ですが​、日本の旧車文化が海外で愛される重要なルートにもなっています。

新関税が導入されたら関税率はどう変わる?

今回話題のトランプ氏の関税政策では、乗用車・部品に一律25%の追加関税を課すと言われています​。これは現在課されている関税に上乗せする形です。アメリカでは元々、海外からの完成車に乗用車は2.5%、ピックアップトラックなど軽トラックや商用車には**25%の関税がかけられてきました(1960年代の「チキン税」と呼ばれる政策が由来で、トラックだけ高関税になっています)。トランプ前大統領の新方針ではこの既存税率に追加25%を足すとのことで、つまり乗用車は合計27.5%、軽トラック系は合計50%もの関税率になります。下の表にまとめました。

車種区分現行の関税率新関税案の関税率
乗用車(セダン・SUV等)2.5%27.5%
小型トラック・バン(ピックアップ等)25%50%

※従来からある関税に新たな25%を上乗せした場合の合計税率。部品にも25%の追加関税が適用予定です。

ご覧のように、日本から輸入される日本車に対する税負担が一気に跳ね上がる計算です。この追加関税が実施されれば、日本から米国への自動車輸出(新車・中古車とも)のコスト増は避けられません。特に中古車の場合、数百万~数千万円の高額なクラシックカーも多いため、その影響は顕著でしょう。

中古車輸出に与える影響は?

では具体的に、関税25%アップによって日本からアメリカへの中古車輸出(JDM車)にはどのような影響が出るのでしょうか。考えられるポイントをいくつか挙げてみます。

  • 輸入コストの大幅上昇: 関税率アップにより、アメリカの購入者が支払う輸入コストは大きく増えます。例えば日本で評価額が約300万円(約2万ドル)のクラシックカーの場合、追加関税だけで従来より数十万円規模の上乗せ費用が発生し、アメリカ到着時の支払い総額が大幅に上昇します​。もともと高価なスカイラインGT-RやスープラといったJDM車もさらに割高となり、「憧れの旧車」が今以上に高嶺の花になる恐れがあります。
  • 購買意欲・需要への影響: 価格が上がれば当然ながら一部の買い手は二の足を踏むでしょう。関税引き上げにより日本車の競争力が低下し、アメリカのユーザーが輸入中古車を諦めたり、購入を先送りしたりする可能性があります。特に予算に限りがある若いクルマ好きや小規模の中古車ディーラーにとって、27.5%や50%の関税増は大きな負担です。結果として、日本から米国への中古車輸出台数が落ち込む懸念があります。実際、専門家は「関税コストの増加で日本の中古車の競争力が落ち、業界全体で輸出が縮小する可能性が高い」と指摘しています​。
  • 米国内マーケットの変化: アメリカ全体で見ると、新車価格が関税で値上がりすれば「それなら中古でいいや」と国内の中古車に目を向ける消費者が増えるかもしれません。新車のみならず輸入中古車まで値上がりする状況では、相対的に米国内で流通している中古車(すでにアメリカにある日本車含む)への需要が高まり、中古車相場が上昇する可能性も指摘されています。ただし米国内の中古車需要増加は一時的に留まるとの見方もあり、将来的な価格動向は不透明です。いずれにせよ、日本からの中古車輸出が減ればアメリカ市場で日本車の存在感は薄れ、代わりに現地調達の車両や他国からの輸入(関税影響の少ない地域)が選好される展開も考えられます。
  • エンスージアスト(愛好家)層への影響: 特にJDMスポーツカーなどを心待ちにしているファンにとって、関税アップは頭の痛い問題です。「欲しいクルマが予算オーバーで買えない!」というケースが増えるかもしれません。また一部では、高関税を避けるためにカナダや欧州で同じ車を探す動きも出る可能性があります。カナダは15年ルール(製造後15年で輸入可)のため米国より新しいJDM車も早く入手できますし、欧州各国でも右ハンドル車への寛容度が比較的高い国があります。関税によっては「アメリカより先に他の国で売ってしまおう」と日本側の業者が考えることもあり得るでしょう。その結果、本来なら米国に渡っていたかもしれない極上コンディションの日本車が別の国へ流れてしまい、米国のファンが入手できるチャンスが減るといった影響も想定されます。
  • 軽トラック等の商用中古車への影響: 前述のように日本の軽トラックやバンは従来から25%の関税が課せられていました。それでも農場や配達用などにユニークな存在として細々と輸入されてきましたが、新たな関税が上乗せされれば実質50%もの関税負担となります。例えば車両価格50万円の中古軽トラを輸入する場合、関税だけで約25万円を納める計算です。これではさすがに採算が合わず、個人輸入はもちろん業者による仕入れも手控えざるを得なくなるでしょう。右ハンドル車が一般的なグアムやハワイなどでも、日本の中古トラック・バンはこれまで手頃な選択肢でしたが、高コスト化で「日本車離れ」**が進むかもしれません​。結果として、これらの地域では現地で流通している中古車の価格が上がったり、アメリカ本土から代わりに車を仕入れる動きが強まる可能性があります。

日本製スポーツカーの代表格「日産スカイラインGT-R」などのJDM車は、25年ルールを経て合法化されたことで近年アメリカでも人気ですが、関税が上乗せされると輸入コストが跳ね上がり価格高騰は避けられません。特に高額な希少車ほど関税額も大きくなるため、購入のハードルが一段と高くなってしまいます。

業界と政府の対応は?

こうした状況を受け、日本の業界や政府も動きを見せています。日本自動車工業会(JAMA)は公式に日本政府へ働きかけを行い、米国側に関税措置の例外適用や緩和を求めるよう要請しました​。実際問題、米国市場は日本の自動車メーカーにとって重要な稼ぎ頭であり、輸出縮小が長引けば自動車産業のみならず日米双方の経済に打撃となりかねません。「我々としては極めて遺憾。あらゆる選択肢を視野に入れつつ適切な対応策を検討する」と日本政府高官がコメントするなど​、政府レベルでも対抗措置や支援策を模索している段階です。ただ現時点ではアメリカ側は日本を含む各国に一切の例外を認めない姿勢で、交渉は難航している模様です。

一方、日本の中古車輸出業者にとっても死活問題です。業界では「米国依存を下げて他の市場を開拓しよう」という声も出ています。東南アジアやアフリカ、中東など、日本の中古車が人気な地域は他にも多く存在します。実際、世界全体で見れば日本から年間150万台以上の中古車が輸出されていますが、その主要な送り先はニュージーランドや中東諸国、アフリカ諸国などアメリカ以外の国々です。今後アメリカ向けが厳しくなれば、そうした既存の市場により力を入れたり、新たな販路を開拓していく必要があるでしょう。幸い、2022年頃からの円安もあって日本の中古車は国際市場で割安感があり、アメリカ以外にも需要は旺盛です。ただし、日本国内の中古車価格が海外需要で高騰しすぎると、日本の消費者にとっては迷惑な話にもなりかねません。このように関税問題は一国だけでなく多方面に影響が波及するため、注意深く見守る必要があります。

中々相手は手強いですが、何とか日本の政府も日本の将来の為になる最高なディールを決めて欲しいですね♪

日米大統領がディールの握手をするところ。

まとめ:不確実性はあるものの慎重な姿勢が必要

最後に今回のテーマを総括します。トランプ前大統領が示唆する対日輸入車への高関税政策は、実現すれば日本からアメリカへの中古車輸出ビジネスにも無視できない影響を及ぼす可能性があります。価格上昇による輸出減少、そして日本車ファンの落胆…懸念材料を挙げればきりがありません。ただし、これはあくまで「もし実施されたら」の話であり、将来の状況は予断を許しません。政治情勢や米国内の反応次第では関税方針が見直される可能性もありますし、仮に発動しても恒久的ではなく交渉の余地が出てくるかもしれません。日本側も粘り強く交渉を続けるとともに、業界全体で柔軟に戦略転換を図っていくことで、この逆風を乗り越える道を模索していくでしょう​。

いずれにせよ、自動車という産業は両国にとって重要であり、趣味の域であるJDM旧車から大量生産の新車に至るまで、その動きには世界中が注目しています。中古車業者から自動車ファンまで、幅広い関係者が今後の展開を注視しており、「関税」「中古車輸出」「JDM車」「日本車」「アメリカ」といったキーワードが当分ニュースを賑わしそうです。私たち消費者としても最新情報を追いつつ、状況に応じたベストな選択ができるよう備えておきたいですね。関税問題が落ち着き、これからも安心して憧れの日本車を世界中の人々に届けられる日が来ることを願っています。

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